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Author:natasho
国民健康保険 名田庄診療所
中村伸一


施設名称 :
国民健康保険名田庄診療所
開設年月 : 1955年7月
所在地 :
福井県大飯郡おおい町名田庄下6-1
管理者 : 所長 中村伸一
診療科目 :
内科、胃腸科、消化器科、アレルギー科、小児科、外科、整形外科、皮膚科
併設施設 :
「あっとほ~むいきいき館」内に、診療所のほか、歯科診療所、訪問・通所介護事業所、国保総合保健施設、住民のための多目的室、町役場の支所などを併設。



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<ところで、だれを最初に風呂に入れる?>
 村の保健・医療・福祉の関係者が集まって協議した結果、デイサービスを開始することになったものの、非常に難しい問題が飛び出しました。いったい第1号のデイサービス利用者はだれなのか?今から15年前の出来事です――。

<「第1号」に失敗は許されない>
 本来なら、寝たきりで何年も風呂につかっていない人をデイサービスに迎え入れたいのです。しかし、予行演習はしても実績がないため自信がありません。こちらが勧めても本人から拒否されることもありえます。もともと銭湯のなかったこの村では、肌を他人に見せることだけでも抵抗があるのです。
 第1号で、失敗は絶対に許されません。一度失敗したら、せっかく盛り上がったスタッフの気持ちが萎えてしまいます。
 まずは候補者選びです。私と看護師、保健師で相談を始めました。重度の障害で寝たきりの方から、比較的元気だけどひとり暮らしの方まで、数名の候補者を選びました。
 話し合っているうちに、デイサービス利用者第1号の条件が出そろってきました。
(1)障害の程度が比較的軽症であること。
(2)感謝してくれそうな人であること。
(3)話し好きで近所の人とコミュニケーションがとれていること。
 この3条件です。(1)はスタッフの負担を軽くするため、(2)はスタッフに自信をつけてもらうため、(3)はデイサービスの良さを口コミで伝えてもらうため、という目的からです。ちょうどこの条件に合うのが、82歳の女性・南あや(仮名)さんでした。

<両手を合わせて喜んでくれたあやさん>
 あやさんは、身寄りのないひとり暮らしの方です。左目が義眼で、右目の視力も衰えてきており、自宅での入浴が困難になっていました。いつも、診察の終わり際に、両手をこすり合わせて「先生、このおばあをまた診てくださいね」と言って帰っていく方です。
 ホームヘルプでの自宅入浴も考えましたが、あやさん宅の浴室は狭く、うちの大柄なヘルパーとでは、浴室に入りきれません。こんな理由で、第1号は選ばれました。
 いよいよデイサービス初日。緊張するスタッフとは裏腹に、あやさんはご機嫌でやってきました。「ありがたいのー、風呂に入れてくれるなんて」とにこやかに話しながら。
 寝たきり老人を想定して練習してきた介護職員にとって、あやさんを入浴させることは「楽勝」でした。ひととおりサービスが終わったあとであやさんは、診察室と同じように両手をすりあわせ、拝むようにして介護職員に感謝しました。「ありがとうね。今日はいいお風呂でうれしかった。またお風呂に入れてちょうだいね」
 やったー、期待どおり! あやさんは喜んでくれ、介護職員は感激していました。その後、あやさんは、この日のことを近所の人たちにうまく伝えてくれて、デイサービスの評判は広まっていきました。まもなく、それを聞きつけた女性が「うちのおばあちゃんも風呂にいれてほしい」と申請してきたのです。

<3年ぶりの風呂に満足して逝ったすみえさん>
 デイサービス利用者第2号候補は、寝たきりで3年間風呂につかっていなかった92歳の女性、角すみえ(仮名)さんです。「死ぬまでに一度でいいから風呂に入りたい」と本人は訴えていました。
 超高齢で長年寝たきりのすみえさんを第2号として選ぶにはかなり勇気が必要でした。しかし、すみえさんの場合「死ぬまでに……」の期日はまちがいなく迫っています。本人と家族の強い要望で、看護師が立ち会うことを条件にデイサービス第2号となりました。
 当日、診療所から看護師を老人福祉センターに派遣して、すみえさんのデイサービスとなりました。福祉バスのストレッチャーに乗ったすみえさんが運ばれます。介護職員はかなり気合いが入っていましたが、それが空回りするほどスムーズに入浴介助は行なわれ、無事デイサービスは終了しました。
 驚いたことがひとつあります。長いあいだ入浴していなかった人が浴槽に入ると、どうなると思いますか? 湯船が垢まみれになるのは、せいぜい数週間風呂に入っていない人の場合です。数年間も入っていない人は、まるで足の型枠がはずれるように脱皮するんですよ。ホント驚きました。
 「気持ちよかったー。死ぬまでに一度風呂につかりたかったんや」。満足そうな笑顔でした。最初のデイサービスから数カ月後、すみえさんはあの世に旅立たれました。

<デイサービスのボランティアグループ結成>
 デイサービスを開始したこの時期に同時進行していたのが、一般住民対象の「在宅ケア講座」です。私や保健師が介護技術や家庭医学の話をしながら、家庭で介護を抱え込まないような雰囲気作りをしてきました。
 最初は80人もの参加者がいたこの講座も、会を重ねるごとに人数は減り、11回目を迎えたときは20人程度となっていました。これを最後の回にしようとしたところ、参加者からこんな声があがりました。
「中村先生! もう先生の話は聞き飽きたから、今度は実践したいんですよ、私たちは」
 なんと最後まで残った参加者たちは、ボランティアとしてデイサービスに協力したいと言ってきたのです。長くこの地で働いてきた中でも、もっともうれしい場面でした。
 デイサービスでの調理の手伝いや、入浴前後の着替えの介助などを行なうこのボランティアグループは、「やすらぎ会」と名づけられました。会員数は50名前後で、現在、活動歴は15年になります。4年前には、初代会長・山本幸子さんから二代目会長・森口敏江さんに受け継がれ、ボランティアの世代交代も順調にすすんでいます。少数ではありますが、男性ボランティアの参加もちらほら出てきました。
 地域全体で介護する雰囲気が、この地域を支えています。自然な形でボランティアとして人を介護し、老いて自分が介護される番になったら自然な形でそれを受け入れる。「お互い様」の精神で支え合う流れが今後も続いてほしいと願います。
 ところで、在宅ケアに対する私たちの取り組みが数値になって評価されたのは、デイサービス開始のずーっと後の平成11年、そう、介護保険制度導入前のことでした。
 ちょうどこの年は、保健医療福祉総合施設「あっとほ~むいきいき館」がオープンした年です。このあたりの話は次回に。

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考えさせられました

 中村先生初めまして 初閲覧&コメント致します 私は18の歳から看護師をしており、今年で丸16年経ちました 今は初めての介護病棟に勤務しており、勝手がわからず、認知症の方にここまで囲まれた経験がないため、苛々してしまい心ないことを言っては自己嫌悪に陥ったりしています そんな毎日ですが、先日「はっ!」とすると同時に看護師というより、一人の人間として考えさせられ、また喜んだことがありました それは、ある100歳のお婆さんの入浴介助での出来事 体を洗い、シャワーで泡を流していたところ、「久々にお湯に浸かりたい」と言われました 私は病院を5月に替わったばかりで、周りのスタッフの方が介護病棟ではベテランになります そろりと周りをみると、えー?という反応 しかし今年八月に100歳を迎えたお婆ちゃん これから何回浴槽に浸かれるかわかりません いつもニコニコ早くお迎えがこないといかんのやけど…が口癖の方 なんでも介護病棟に来て3年間風呂に浸かってないとか! 介護上の安全や高齢であることからの対応かと思います 特に麻痺もなく、車椅子は必要ですが、自宅でも介護出来るレベルです 意思もはっきりしており、看護師や介護福祉士に遠慮して言いだせなかったのかも知れません そんな方に甘えられた身としては「身体的に何も問題ないんやけん、風邪や安全に気を付ければいいさ!」と大きな独り言(笑)を周りに聞かせて浴槽に誘導しました 上がった後の満足そうな笑顔の可愛いこと その後私がしっかり風邪を引きましたが、人が持つ当たり前のニーズを満たすことの障害や難しさ、達成感を少し味わいました 先生の入浴介助奮闘記をみて改めて、些細な日常に転がっていても拾えない小さな願いを叶える難しさや大切さを感じます 私は病院なので、不測の事態が起こっても対処しやすい環境にあります しかし先生の診療所ではクリアするのが難しい事も沢山だと思います そんな中力を合わせて、思いやりを持って前に踏み出していかれる先生やスタッフ、ボランティア、行政、何より患者さんやご家族に拍手です! これからもブログをみたりコメントを書いたりしか出来ないと思いますが、沢山皆様のパワーや前向きさを吸収して頑張ります 名田庄の皆様も日々笑顔で過ごせますように

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2009/05/26 11:00

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