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Author:natasho
国民健康保険 名田庄診療所
中村伸一


施設名称 :
国民健康保険名田庄診療所
開設年月 : 1955年7月
所在地 :
福井県大飯郡おおい町名田庄下6-1
管理者 : 所長 中村伸一
診療科目 :
内科、胃腸科、消化器科、アレルギー科、小児科、外科、整形外科、皮膚科
併設施設 :
「あっとほ~むいきいき館」内に、診療所のほか、歯科診療所、訪問・通所介護事業所、国保総合保健施設、住民のための多目的室、町役場の支所などを併設。



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<裸のつきあいは難しい?>
 村役場の住民福祉課長が偶然においしい補助金でゲットしてきた福祉バス。これを「どうやって利用しようか?」と相談に来たついでに、「健康と福祉を考える会」を立ち上げちゃいました。私が名田庄診療所に赴任して間もない、いまから17年前のことです。
 村の保健・医療・福祉の関係者が集まって、第1回目の会合を開いたら、いろんな意見が出るわ出るわ。その勢いで「せっかくいいバスがあるんだから、寝たきりのお年寄りをお風呂に入れる『デイサービス』を始めよう」という結論になったのです。
 しかし、そのデイサービス、簡単には始められません。なにせ、だれも経験者はいませんし、「お風呂に入れている最中にもしものことがあったら、だれが責任を取るんだ」という意見も出ました。
 そもそも、この名田庄村には銭湯なるものが存在しません。ずーっと前から、他人どうしがいっしょに風呂に入る風習がなかったのです。日頃から地域の付き合いが濃厚で、お互いの絆が強い「裸のつきあい」をしているにもかかわらず、本当の「裸のつきあい」はしていなかったことになります。
 そのような事情もあり、「デイサービスやっても、わざわざ風呂に入りに来る年寄りなんかいないぞ」という冷ややかな意見もありました。
 それでも私の中では、「体は拭いてもらっているけど、湯船には1年以上浸かっていない」という寝たきりの方を往診で診るたびに、なんとかしたいという気持ちが強まっていました。

<社協局長が一肌脱ぐ>
 一方、福祉バスをゲットしてきた住民福祉課長の思いは、それどころではありません。有効利用しなければ、たとえ補助金付きとはいえ、無駄遣いだと議会で叩かれてしまいます。みんなの前で課長は言いました。
 「とにかくやりましょう! やるしかないんです!」
 しかし、勢いで始めるには少々無理があります。経験もないのに、いきなり虚弱な寝たきり高齢者を入浴させるのは危険です。そこで私が提案しました。
 「みなさん、どうでしょうか? このメンバーのなかのだれかが水着になって、手足を縄でくくって、片麻痺のお年寄り役になってもらいましょう。一度、練習してみましょうよ。僕がビデオで撮りますから、あとでそれを見て、考え直しましょうよ」
 すると、社会福祉協議会の事務局長(社協局長)が間髪入れずに応えたのです。
 「それなら私が一肌脱ぎましょう! お役に立てるならッ、海パン1枚になりますよ。ガッハッハッ」
 当初私は、役場の新人男子職員がこの役に適していると考えていました。女子職員で志願する人がいたら止めはしませんが、できたらご遠慮願いたい年齢の方々でした。(おこられるかな?)あとになって知ったことですが、この局長、実は肉体自慢の方で、脱ぐのがけっこう好きなようです。でも、酔って公園で全裸になるような人ではありません。

<入浴介助のチェックポイント、服の脱がせ方、着せ方、お湯の温度>
 とにもかくにも、社協局長を海パン一枚にし、手足をしばって片麻痺老人に見立てた入浴サービスの予行練習を行なうことになりました。やがて生まれてくる子どものために買ったばかりの8ミリビデオを、成り行きとはいえ、まさか縄で縛られた海パン1枚のオッサンの撮影に使うことになろうとは思いませんでした。トホホ……。
 数日後に行なわれた入浴サービスの予行練習会には、健康と福祉を考える会のメンバー全員がそろいました。
 実際のデイサービスを想定した練習ですから、お迎えから始めました。福祉バス「ふれあい号」でご自宅にお迎えにあがり、老人福祉センターまで運びます。そして、バスの項部に備わったリフトで、車椅子に乗った片麻痺老人役の社協局長を降ろす。次に、車椅子を押して、センターの室内に入ってもらい、保健師と看護師が体調を問診し、血圧・脈拍・体温等をチェックします。ここまでは順調、順調。いい感じです。
 さて、いよいよ入浴です。年齢を感じさせない肉体を誇る社協局長の体は、たしかに筋肉質で立派でした。いやいや、そんなことはどうでもよくて……。
 服を脱がせる順序のチェックも入ります。脱がせるときは健側から、着させるときは麻痺側から。介護の基本です。
 海パン1枚になった局長に、新米の介護職員がまずシャワーをかけました。
介護職員「ほな、シャワーかけますよ。」
社協局長「うわっちっち! なにするんじゃー!!」
 介護職員は自分の好みの温度でシャワーをかけたのです。親切心で。この介護職員はとても熱好きでしたが、社協局長はぬる好きなのです。個人の好みでお湯をかけてはいけませんね。
 お湯をかけるときには、まずは熱いのが好きかぬるいのが好きか、好みをたずねて、それから足元から徐々に上のほうにお湯をかけていく。あたりまえと言えばあたりまえなのですが、未経験だからわからないんですね。最初のお湯のかけ方をクリアしたら、あとの入浴介助は上手でした。新米といえども、さすがに勉強していましたね。

<で、だれを最初に入れる?>
 とりあえず一通り終わったあとで、反省会を開きました。いえ「反省会」という呼び方はしょぼいので、「発展会」にしようということになりました。前向きでいい感じです。
 録画したビデオを見ながら、あーでもないこーでもないと、みんなで議論しました。重症の利用者のときは診療所の看護師が応援に行くこと、湯冷めしないような工夫をすること、入浴前後に水分摂取を忘れないこと、浴室で不便な箇所の改修費用は、課長が次の補正予算で計上すること、などが確認されました。
 とってもいい雰囲気の中、入浴サービス予行練習会は終わりに近づいてきました。そのときです。
 「ところで、だれを最初に風呂に入れるんだい?」
 予行練習から、一瞬にして現実に引き戻されました。非常に痛いところをついた意見が飛び出しました。それまでのいい雰囲気がいっきに寒くなるような瞬間でした。
 第1号のデイサービス利用者はだれにするのか? もともとニーズのなかったところを掘り起こす作業が始まります。 (つづく)

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